2017/11/15

実は重要!?裁判における残業時間の認定方法 (弁護士執筆)

執筆者 弁護士 戸田順也

会社に請求できる残業代を計算するには、残業時間(労働時間)がどれだけあるのかを先に確定する必要があります。しかし、法律上の残業時間(労働時間)がどのように認定されるのかについて知らない方は意外と多いのではないでしょうか。

今回は、裁判になった場合に法律上の残業時間(労働時間)がどのように認定されるのかについて、詳しく解説します(なお、残業代の計算方法の詳細については、「意外と知らない!? 正しい残業代の計算方法(弁護士執筆)」(https://zanreko.com/news/850)をご参照ください。)。

 

1. 残業時間(労働時間)は「労働者が使用者の指揮監督の下にある時間」

「残業時間」という言葉からは、終業時刻以降に会社に残って仕事をしていた時間を連想する方も多いと思います。
しかし、残業代計算に使われる残業時間は、労働時間のうち、所定労働時間(会社との雇用契約や就業規則などで定められている始業時刻から終業時刻までの間の勤務時間)を超える時間のことを指します。そして、労働時間は、「労働者が使用者の指揮監督の下にある時間」のことを指します。
したがって、労働者が使用者の指揮監督の下にあれば、例えば始業時刻前の時間帯でも残業時間(労働時間)になります。他方で、終業時刻以降に会社に残っていても、同僚と雑談をしている場合や社内部活動をしている場合など、労働者が使用者の指揮監督の下になければ、残業時間(労働時間)として扱われません。

1-1.通勤時間・出張の移動時間

1-1-1. 通勤時間・出張の移動時間

労働から離れて自由に利用することができる休憩時間については、残業時間(労働時間)にはなりません。

他方で、たとえ「休憩時間」という名前であったとしても、会社からの指示があれば直ちに作業に従事しなければならない状態にある時間(手待ち時間)は、残業時間(労働時間)になります。
例えば、休憩中に来客があれば対応しなければならないような来客当番であれば、休憩中の時間も手待ち時間として残業時間(労働時間)になります。

1-1-2. 通勤時間・出張の移動時間

通勤時間は、残業時間(労働時間)にはなりません。

出張の移動時間も、通常は残業時間(労働時間)にはなりません。ただし、出張先に持参する物品を出張の移動時間中監視し続ける指示があったような場合には、労働者が会社の指揮監督の下にあったとして残業時間(労働時間)になることもあります。

日常での勤務先と用務先との間の移動時間などは、残業時間(労働時間)になることが多いでしょう。

1-1-3.研修時間

会社内や会社外で行われる研修の時間については、会社に出席を強制されない自由参加のものであれば、残業時間(労働時間)にはなりません。

他方で、研修の時間でも、会社の明示的あるいは黙示的な指示があって参加が事実上強制されているような場合には、残業時間(労働時間)になります。

1-1-4.会社行事・宴会の時間

会社行事や会社の宴会の時間は、基本的には、残業時間(労働時間)にはなりません。

もっとも、会社行事や会社の宴会の時間でも、会社の明示的あるいは黙示的な指示があって参加が事実上強制されているような場合には、残業時間(労働時間)になることもあります。

1-1-5.持ち帰り残業

本来会社でするべき仕事について自宅等に持ち帰って作業した場合であっても(いわゆる持ち帰り残業)、その作業時間が残業時間(労働時間)になる場合があります。

上司から持ち帰り残業の明示的な指示がある場合のみならず、明示的な指示がない場合でも、仕事の状況等によっては、持ち帰り残業の作業時間が残業時間(労働時間)になることもあり得ます。

1-2.残業が承認制の場合

会社によっては、残業する際に会社の承認を労働者に義務づけていることがあります。いわゆる残業承認制です。このような場合、承認を受けていないの時間は残業時間にならないと思い込みがちですが、必ずしもそうとは限りません。

通常の勤務時間内では処理しきれないような量の仕事を指示されているような場合には、残業することについて黙示の指示があるとみなされ、実際に残業した時間分だけ残業時間(労働時間)として扱われることも少なくありません。

2.裁判における残業時間(労働時間)の具体的な主張立証方法

残業時間(労働時間)になる時間とならない時間は、これまで説明してきたような基準で区別されます。
しかし、実際に残業代を請求してみると、労働者の側と会社の側で、残業時間についての認識が一致しない場合も多くあります。
このような場合に裁判になったとすれば、労働者が残業時間をどのように主張立証することになるのか、これから詳しく説明します。

2-1.始業時刻・終業時刻は労働者が主張立証する

裁判で残業代を請求するには、残業したという事実を労働者の側で主張立証しなければなりません。

具体的には、労働者の側で、個々の日ごとに、始業時刻・終業時刻・休憩時間を特定して、「何月何日には何時間何分働いた」ということを主張立証する必要があります。

2-2.労働者は在社時間を主張立証すれば足りる場合が多い

労働者は、始業時刻と終業時刻を主張立証しなければなりません。つまり、労働者は「この日はこの時刻から業務を始めた」「この日はこの時刻に業務を終えた」ということを主張立証しなければなりません。

しかし、「いつ業務を始めたか」「いつ業務を終えたか」ということを直接主張立証することが簡単ではないことも少なくありません。そのような場合、労働者は「何時に会社に来たか」「何時に会社を出たか」(つまり在社時間)を主張立証することで、間接的に「いつ業務を始めたか」「いつ業務を終えたか」を主張立証することになります。

在社時間を主張立証できれば、多くの場合、始業時刻と終業時刻も主張立証できたことになります。通常、会社に在社していれば、会社の指揮監督の下にあるだろうと考えられるからです。労働者が在社時間を立証できた場合には、今度は会社の側が、「在社していても会社の指揮監督の下になかった」(つまり労働していなかった)と反論することになります。この点について会社側が具体的に適切な反論をできなければ、多くの場合、労働者の主張に沿って在社時間から始業時刻と終業時刻が認定されることになります。

2-3.始業時刻・終業時刻や在社時間を立証するための証拠

労働者は裁判では、始業時刻・終業時刻や在社時間を主張した上で、その主張を立証するための証拠を出さなければなりません。
始業時刻・終業時刻や在社時間を立証する証拠の種類は数多くありますが、証拠としての価値もまたそれぞれです。

2-3-1.タイムカード

タイムカードは、始業時刻・終業時刻を立証する強力な証拠になります。タイムカードは客観的に時刻が記録されるものであり、設置目的も通常は始業時刻・終業時刻の管理のためであるからです。

裁判では、タイムカードがある場合には、特段の事情のない限り、タイムカードどおりに始業時刻・終業時刻が認定されることが通常です。会社側は、それより短い残業時間を主張する場合には、タイムカードの記録が始業時刻・終業時刻と異なることについて主張立証しなければなりません。

もっとも、いわゆるブラック企業では、そもそもタイムカードが設置されていない場合や、実際には退社していないのに虚偽の打刻をさせられてサービス残業を強いられる場合もあります。そのような場合には、タイムカード以外の証拠を確保しておく必要があります。

2-3-2.パソコンのログ・入退館記録

会社のパソコンの起動時刻やシャットダウン時刻のログが残っているような場合には、そのログが始業時刻・終業時刻や在社時間の証拠になることがあります。

また、会社の建物の入退館時間の記録が残っている場合には、その記録が在社時間の証拠になることがあります。

いずれも客観性が担保されているため強力な証拠といえます。もっとも、これらは会社側が管理している記録であるため、どうやって入手するかについては、よく考えておく必要があります。

2-3-3.日記・日報

営業日報も、始業時刻・終業時刻の証拠になることがあります。

しかし、営業日報に記録された時間は、機械的に記録されたものではなく、労働者が自ら記入したものです。そのため、労働者は、営業日報の時間の記録が信用できるということを、他の証拠で補充して立証する必要があります。

労働者の個人的な日記なども、始業時刻・終業時刻の証拠になることがあります。

もっとも、個人的な日記は、営業日報と異なって会社が全く関与していないため、裁判では営業日報よりも信用されにくい傾向があります。

2-3-4.GPS

最近は、GPSで在社時間を把握・記録するスマートフォンのアプリがあります。代表的なものとしては「残業証拠レコーダー」(残レコ)があります。

GPSの記録には客観性があるため、在社時間の証拠としてはかなり強力です。在社時間を立証できれば、多くの場合、始業時刻と終業時刻も立証できたことになるのは、すでに説明したとおりです。

また、労働者の側で容易に入手できるという点でも、GPSの記録は優れた証拠といえます。

もっとも、GPSの記録が裁判で信用されるかどうかは、GPSのデータをどのように保管しているか、ユーザーによる記録の改ざんが容易かどうかなど、アプリの仕様にもよることには注意が必要です。

(この記事は、2017年11月15日時点での法令を前提にしたものです。)

弁護士 戸田 順也

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