2017/07/10

名ばかり取締役って何?役員や管理職でも残業代が出ることがある!?(弁護士が解説)

執筆者 編集部弁護士

大阪府と奈良県で小中学生を対象にした進学塾を経営する会社が、講師の大半を取締役扱いにして残業代を支払っていないとして、元講師から複数の訴訟を起こされているというニュースが報道されました。
(参考 朝日新聞社(http://www.asahi.com/articles/ASK735FL4K73PLZB00W.html))

そこで、「名ばかり取締役」とは何か?取締役でも残業代が出るのか?役員以外の管理職(部長、課長、店長等)ではどうなのか?について解説しました。

1.取締役等の役員について

1-1.原則として、取締役等の役員に残業代は出ない

結論から言えば、取締役や監査役等の役員については、会社は残業代を支払う義務がないのが原則です。

労働基準法(労基法)により残業代を支払う義務が発生するのは、会社等と雇用契約(労働契約)の関係にある「労働者」(=会社等に使用されて労働し、賃金を支払われている方)です。

他方、取締役や監査役等の役員は、会社と雇用契約ではなく委任契約を締結しており、通常は「労働者」に当たらないため、取締役や監査役等の会社法上で決められた役員に対しては残業代を支払う義務がありません。

ただし、いわゆる役員のなかでも執行役員については、実態・実質を見れば、「労働者」に当たる場合が多いと考えられ、下記2の管理監督者となるかの問題になります。

1-2.しかし、「名ばかり取締役」であれば残業代を請求することは可能

上記のように取締役等の役員は「労働者」ではなく、残業代を支払われないのが原則ですが、
「取締役等の役員」なのか、「労働者」なのかについては、会社が形式的に取締役等の肩書をつけているかではなく、実態・実質で判断されます。

つまり、肩書が取締役であっても、実態・実質が労働者と変わらない「名ばかり取締役」であれば、残業代が支払われる「労働者」となります。(ピュアルネッサンス事件裁判例(東京地判平成24.5.16)、類設計室事件裁判例(京都地判平成27.7.31))

そして、実態・実質が労働者と変わらない「名ばかり取締役」かどうかは下記の事項等を考慮して判断します。
①取締役になった経緯:会社法に従って株主総会で取締役として選任されているか、取締役として登記されているか等
②業務執行権限の有無:経営方針や人事等の重要事項を実際に決定している会議(取締役会)に参加しているか、その会議について会社法で決められた取締役会議事録が作成されているか等
③勤務に対する拘束の有無及び内容:出退勤時間や欠勤について細かく管理されているか等
④業務内容:業務内容が経営に関わるものか、それとも現場の仕事や事務的な仕事か等
⑤業務に対する対価の性質及び額:対価の名目は「給与」か「報酬」か、雇用保険料等の控除はされているか、報酬の金額がその会社の取締役の報酬として常識的な金額か等
(この基準は、冒頭のニュースの会社に勤めていた方が残業代を請求した際の裁判の判決(京都地判平成27.7.31)での摘示を基にわかりやすくまとめたものです。)

2.実は多くの管理職の方は、残業代がもらえる!?

管理職の方には残業代を払わない会社が多いため、誤解している方も多いですが、
「管理職」=「残業代が出ない」ではありません。
むしろ、管理職の方のほとんどは、残業代の請求ができるといってよいでしょう。

また、役職手当などが支給されていても、大部分の方は残業代が請求できるでしょう。

労基法上、「管理監督者」(労基法41条2号)に対しては残業代を払わなくていいことになっていますが、「管理職」=「管理監督者」ではありません。
管理職の方のうち、残業代の請求ができない「管理監督者」は、おおむね、以下①~④の全ての条件を満たすごく一部の方だけです。
(以下の①~④の条件は、過去の裁判例を基にわかりやすさを重視してまとめた参考の基準です。)
① 会社等の経営判断に参画しているか、特定の部門全体を統括していること
② 部下の採用・昇格・解雇の決定権限がある等、労務管理上の相当の権限があること
③ 自分の出勤時刻、退勤時刻を自分の裁量で自由に決められること
④ 他の従業員と比べて、相当の金額差がある高額の給与が支給されていること(基本的には、賞与や各種手当を含めた給与の金額が、役職が1つ下の従業員より相当に高いことが必要だと考えられています。)

例えば、(業務の実態にもよりますが、)上司の指示に従って働く部長・課長の方は、「管理監督者」に該当せず、残業代を請求できる場合が多いでしょう。 また、飲食・小売チェーンの店長の方も、「管理監督者」に該当せず、残業代を請求できる場合は多くあると思われます。

仮に、会社が「管理職だから、残業代が出ない」と言っていても、上記の①~④の条件をおおむね満たす方以外は、残業代の請求ができます。

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このように役員という肩書でも実態として労働者と変わらない方や、管理職のほとんどは、労基法上、残業代をもらう権利があります。
もっとも、このような方には、タイムカードなどの労働時間の証拠がない方が多いかもしれません。そのような方にお勧めなのが、スマートフォンにインストールしておくだけで、労働時間の証拠が残せるアプリ「残業証拠レコーダー」です。いつかは残業代を請求したいという方は、残業証拠レコーダーで証拠を残しておけば、退職後などに残業代を請求できます。残業証拠レコーダーでは、残業代の推計も可能です。
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